株式会社商事法務が主催する「内部通報企業実務研究会」において、2026年1月26日に、弊社代表取締役の野村正和氏が「内部通報・コンプライアンス実務におけるAI活用の現在地と未来」と題した講演を行いました。
本講演は、研究会メンバーの多くが内部通報対応業務へのAI導入を検討する中で、具体的な活用イメージや実務上の課題について情報共有を求める声に応える形で実現しました。野村氏は、現在の多くの企業におけるAI活用が「点のAI」(個別のタスク処理)に留まっており、「個人の作業効率」は向上させても「組織のガバナンス能力」への寄与が限定的であると指摘しました。そして、今後は内部通報のプロセス全体を支援する「線のAI」(Process Solutions)が求められるとし、生成AIの技術が「要約」を超え、「判断支援」と「業務実行」のフェーズに入っているとの見解を示しました。
講演では、AI活用によって打破すべき「3つの構造的障壁」として、「言語の壁(Language Barrier)」、「心理的安全性(Psychological Safety)」、そして「人的リソース(Capacity)」を挙げました。特に、グローバルガバナンスにおけるAIの役割について、以下の具体的なユースケースを交えて解説されました。
- 多言語対応と「文化翻訳 (Culture Translation)」:単なる逐語訳ではなく、通報者の主観的な訴え(例:「誰も逆らえない」)を客観的な「組織リスク構造」(例:権威勾配:高)へ翻訳し、グローバル拠点からの通報に含まれる文化的背景の理解を可能にします。
- 「QAエンジン」による情報精度の向上:通報情報や証拠の「完備度判定」や「矛盾検知」を自動で行い、調査担当者が動く前に情報の質を高めることで、初動負荷を大幅に削減します。
- 「AI集合知」によるグローバル基準の判断:「この国ではOK」といったローカルルールによる正当化を防ぐため、AIがグローバルな法規制や類似の不祥事事例(他社の第三者委員会報告書等)を参照し、判断を支援します。
「事後対応」から「予兆検知」へ野村氏は、AIを導入することで、法務・コンプライアンス担当者の役割が「案件処理者(Processor)」から、リスクをコントロールする「ガバナンスの設計者(Architect)」へと進化すると結論付けました。また、AIが組織の深層にある「企業文化(Why)」「組織メカニズム(How)」「法令違反リスク(What)」という「3層分析モデル」を用いて原因を特定し、「事後対応(Reactive)」から、文化と構造を分析してリスクの芽を摘む「予兆検知(Predictive)」へと転換するロードマップが示されました。
また、職場のリスク検知の事例として、インタビューや 1 on 1 映像を素材に、AIによる音声解析及びVision AI解析によるメンタル状態数値化のデモンストレーションなどを通じてAI技術活用への理解を促進しました。
講演は、会場とオンラインを併用したハイブリッド形式で開催され、講演後の質疑応答の時間も含め、参加者はAI活用によるガバナンス強化の可能性について深く理解を深める機会となり、「日常抱えていた疑問を解決できた」「AI導入を前向きに検討したい」とのご感想をいただくなど、好評でした。
本講演について
- テーマ:内部通報・コンプライアンス実務におけるAI活用の現在地と未来
- 講師:ライフジェンス株式会社 代表取締役 野村正和 氏
株式会社リスクフロント 代表取締役社長/弁護士 久野実 氏(ファシリテイター) - 開催日:2026年1月26日
- 主催:株式会社商事法務 内部通報企業実務研究会事務局
